名古屋地方裁判所 昭和55年(ワ)1757号 判決
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【判旨】
第一
一債務不履行に基づく損害賠償請求について
1 当事者間に争いのない事実並びに<証拠>を総合すると、請求原因一1の事実(調停事件の係属)を認めることができ、同2の事実(被告の鑑定行為)は当事者間に争いがない。
2 原告は右事実をとらえ、被告は原告に対し原告申請の別紙鑑定事項につき誠実に鑑定をなすべき債務を負つたとして、その債務不履行を主張する。
しかしながら、被告は本件調停事件の主任裁判官より証拠調の方法として鑑定を命じられたものであるから、被告に対し私法上の債務を負う余地はなく、この点は本件鑑定が原告の申請に基づきなされたとしても結論に変りがない。
よつて、原告の本主張はその余の点を判断するまでもなく理由がない。
二不法行為に基づく損害賠償請求について
原告は前認定の被告が鑑定人としてなした本件鑑定の結果が不当であり、その結果原告主張のような多額の損害をこうむったとして、被告の不法行為責任を主張する。
しかしながら、被告は前記のように本件調停手続における鑑定人として本件鑑定をなしたものであるから、これが調停当事者である原告に対し不法行為となるためには、被告において故意又は重大な過失により鑑定事項に従つた鑑定をなさず、ために調停手続が不当に遅延し、又は対象事実をまげ明らかに経験則に反する等重大な過誤を犯して全体として鑑定に値しない行為をし、かつその結果の援用により原告に不利な調停結果を生じさせた等特別の事情を要するものと解されるところ、本件全証拠によつても右事情を認めることはできない。
よつて原告の本主張もその余の点を判断するまでもなく理由がない。
第二予備的請求について
1 不当利得の返還請求について
予備的請求原因1・2の各事実の認定については前記請求原因1・2に対する判断記載のとおりであるところ、当事者間に争いのない事実並びに<証拠>によれば、被告は昭和五〇年一二月二二日までに京都簡易裁判所より本件鑑定料として金八〇万円の支払を受けた事実が認められる。
しかし、<証拠>を総合すれば、被告は本件調停主任裁判官に命じられた原告及び関西電力各申請に基づく各鑑定事項に対し全体としてみればこれに対応する鑑定をなして鑑定書を提出し、本件調停主任裁判官がこれを受理して被告に対して鑑定料の支払を命じ、被告は京都簡易裁判所よりこれを受領した事実が認められ、右鑑定を覆えすに足りる証拠はなく、以上によれば被告は本件鑑定料を法律上正当に取得したものに外ならない。
よつて本予備的主張はその余の点を判断するまでもなく理由がない。
2 債権者代位権に基づく請求について
原告は、被告は本件鑑定料の支払を受けたが、鑑定事項につき何ら鑑定をしなかつたと主張する。
しかし、被告が本件鑑定の支払を受けたこと前認定のとおりであるが、被告において本件鑑定をなしたことも前認定のとおりである。
よつて本予備的主張も、その余の点を判断するまでもなく理由がない。
(浅野達男)